トドまってはいけない展 13

2016年05月01日

毎年この時期に開催してきた「トドまってはいけない展」を今年も行います。
展覧会の創始者の一人であり名付親でもあった近藤勝さんが昨年お亡くなりになり、会を存続するかどうかという話し合いが持たれましたが、”トドまってはいけない”という近藤さんの遺志を継ぎ、続けていこうということになりました。

 

不思議な会です。

規約らしきものは一切なく、参加も自由、脱会も自由です。

一人当たりの展示スペースは決められていますが、何を展示するかは自由です。

出品物を売っても良いけれど、基本的には売ることを目的にはしていません。

「じゃ、何が目的なの?」と聞かれそうですが、正直なところ僕にもよくわかりません。

 

元々は近藤さんの専門であるトドマツをもっと活用しようというところから「トドまっては~」というダジャレの展覧会名が決まったわけですが、その後参加者が増えるにつれてその意味は薄れ、展覧会名だけがひとり歩きしてきた感があります。
13回目の今年は24名の多彩な方々が、多種多様な展示を計画しているようです。

 

で、僕は何を展示するかといいますと、ガラスで作った「ココペリ」たちです。

ココペリ(Kokopelli)とは、ネイティブアメリカンの精霊であり、豊作・子宝・幸運をもたらす神のような存在です。

地域や年代によってその姿は変化していますが、通常縦笛を吹く横向きの姿で、頭には触覚のような羽飾りが描かれます。

展覧会の出品者のひとりでもあります小野昭一さんが作っている”ラヴフルート”は北米インディアン由来のものですから、ココペリとは深い関連があります。

 

 

小野さんは以前から木製の小さなココペリを作ってまして、僕にもガラスで作ってみないかとのお誘い、そのうち「ココペリ展」でもやろうやという話に発展しました。「ココペリ展」はまだ大分先のことになりそうですが、今回はその素材と試作品をお見せしようと思っています。

この説明だけではよく分からんという方は、是非会場にてご覧ください。

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続・絵が描けない?

2016年02月21日

ヨーロッパに現存する古いステンドグラスの模写をすることによってその制作技術と感性を学ぶ、というやり方はパリの工芸学校(通称メチエ)で実践していた教授法ですが、ボザール教室でもその方法を取り入れています。


メチエの授業は、製図やガラスカット、組み立ての練習からスタートしますが、その練習は半年ほどで切り上げます。

それ以降卒業までは、絵付けの勉強に集中します。

もちろんガラスカットや組み立ての作業もあるけれど、それはできて当然という扱いです。

 

現在ボザール教室の生徒が進めているオータンの作品模写は、メチエの最終課題のひとつでした。

この作品の模写をするには、土台となる絵付け技術の積み重ねが相当に厚くなければなりません。

 

 

 

実際の作品の制作年代は1515年、ステンドグラスの絵付け技法が最高潮に達しようとしている時代です。

この後数十年の間、ステンドグラス絵付け技法は、油彩画などの影響を受けて”絵を描く”技術の目覚ましい発展を遂げます。

しかしステンドグラス本来の”光を透す”という目的をおろそかにしたため、17~19世紀までの長い退廃期を迎えることになります。

オータンの作品は、高度な絵付け技術を施しながらも、まだステンドグラスとしての魅力を失っていない、という時代の記念碑的な作品です。

 

 

 

メチエの課題で制作するのは、14人の王の内一人の上半身だけ、400h×300w程度の大きさです。

それでも必要な技術を習得して模写を完成させるまで、普通に通学して数ヶ月を必要としました。

対して、今ボザール教室で生徒が制作している模写は、1600h×900wほどの大きさがあります。

面積にすると12倍、4人の聖人のほぼ全身を描いています。

メチエでもこの大きさで制作した例はありません。

そんな作品の模写に果敢に挑戦したボザール教室生徒は、僕の容赦ない駄目だしにもめげず、この作品に2年以上の月日を費やしてここまで到達しました。

 

あと1回、焼成をすれば組み立て作業に入ることができます。

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絵が描けない?

2016年02月19日

数年に一度くらいのことですが、ボザール工房に「ステンドグラスの作家になりたい」という人が訪ねてきます。
その方々の年齢は中学生から定年後までの幅があり、性別も経歴も様々です。しかし、必ずと言っていいほどある共通の質問を発せられます。

それは、「絵が描けないんですけど大丈夫でしょうか?」 というものです。
この質問に対しては、明るく答えるようにしています。
「大丈夫ですよ。全然問題ないです」。
しかし、僕の言葉はまだ続きます。
「最初から絵が描ける人はいません。ボザール教室のカリキュラムは、2年目以降すべて絵の勉強ですから、勉強さえ続けていけば、必ず絵が描けるようになります」。
これを聞くと大抵の人は、安心したというよりはむしろ驚いたような表情を浮かべます。

ステンドグラスにも色々ありますが、少なくともアートとしてのステンドグラス制作を目指しているなら、”表現する”という意味で”絵を描く”必要がありす。”絵の描けないステンドグラス作家”というのは、”歌えない歌手”、”走れないマラソン選手”と同じです。つまり絵が描けないままステンドグラス作家になることはできない、というのは自明の理だと思うのです。

 

ここでお見せする画像は、ボザール教室で一番長く勉強を続けている方が現在進めている仕事です。

その方は60代女性、教室のカリキュラムをすべて終えた後も、自由制作で模写を続けています。

 

模写の課題に選んだのは、フランス、ブルゴーニュ地方の小都市オータン(AUTUN)にある16世紀のステンドグラス「エッサイの樹」です。

実物は、大聖堂の窓一面を飾る大きな作品ですが、その一部を模写しています。

 

一部といっても、工房の三六版ライトテーブル2台を埋める大きさです。

ー続く

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見えない所が大事

2016年02月11日

台湾の地震被害の様子が連日メディアで報道されています。そんな中で頻繁に目にするのは倒壊し多くの犠牲者を出したビルの様子ですが、20年前の建築時に手を抜いた事実が明るみに出ました。 建築においては”見えない所が大事”なのは周知のことですが、見えなければ誤魔化し易いというのも確かです。
ステンドグラスも同様、丈夫で長持ちする作品を作るには、見えない所にこそ手をかけてしっかりと作らなければならないのだけれど、そこが最も手を抜きやすい部分でもあります。

ここで紹介するのは、いずれもボザール教室生徒の作品です。

皆さん最初から手のかかる正当な技法しか習っていないので、手を抜く方法を知りません。

この作品は、教室カリキュラムの2作目です。

ステンドグラスパネルの強度を保ちつつ美しく組み立てるための複雑な技法を練習します。

 

教室カリキュラム5作目。

フランスのブールジュ大聖堂にある13世紀ステンドグラスの模写です。

すべてのガラス片に絵付けが施されています。

この画像はちょうど組みあがったところです。

見た目にすぐはわかりませんが、難しい組み立て部分が多く含まれています。

教室での”模写”とは、ただの複製作りではありません。模写をしながら、制作当時の技法と感性を探り、ステンドグラス表現技術の本質に迫ります。中世のヨーロッパ人がどれほどの情熱を持ってステンドグラスを作っていたのかということを身をもって知ることができます。そこには、手抜きや誤魔化しは一切存在しません。

 

カリキュラム6作目。

中央メダイヨンは、英国オックスフォードの教会にある絵付け作品の模写です。

周囲の幾何学模様は、中世から伝わるステンドグラスデザインパターンのひとつです。

伝統的な幾何学パターンは、淡い色調のアンティークガラスをランダムに配置するのが特徴です。

やはり強度を保つための組み立て方というのがあって、なかなか難しいのですが、この生徒は丁寧に美しく組み上げました。

 

これらの作品は、このあと半田付けをしてパテ詰めをすると、どうやって組み立てたかということはすっかり見えなくなってしまいます。つまり、高度な技術を施した作品も、手を抜いた作品も、完成してしまえばその違いを見分けることはできないわけです。倒壊した不良建築同様、壊れたときにしかその正体を見抜くことはできません。

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忘れる力

2016年01月01日

齢を取ったら物忘れが激しくなります。
「いやしかし、それは努力次第である程度克服できることでしょう」と周囲に吹聴していたのは5年前、「忘れてないふりならできそうだ」と密かに思い始めたのが3年前、昨年は「忘れて何が悪い!」と、ついに開き直ってしまいました。

 

昨年11月に出版された「忘れる力 思考への知の条件」(外山滋比古著)は、そんな僕たちを勇気づけてくれます。

 

記憶と忘却は、敵対関係にあるのではなく協調関係にある。

それが整って初めて柔軟な「思考力」が生まれる。

賢くなるには、もっと忘れろ!

 

というようなことが書かれております。

 

 

さて、忘れる力を人並み以上に身につけた僕が教えるボザールステンドグラス教室のキャッチフレーズは、”忘れる生徒は良い生徒”です。今日教えたことを来週にはすっかり忘れている方、すばらしいです。そういう人に「前にも言ったはずだけど~」なんてことを僕は決して言いません。前に言ったかどうか覚えてませんので。

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いちご畑でつかまえて

2015年12月11日

今年のロッテ”洋酒チョコレート”シリーズ新作は、「ストロベリーブランデー」です。近所のスーパーには定番の「ラミー」と「バッカス」 しかなかったもので、今年は新作がないのかなと思っていたら、教室の生徒さんが別のスーパーで見つけて持ってきてくれました。

 

このパッケージを見てふと思いついたのは、「いちご畑でつかまえて」という松田聖子さん(以下、敬称略)が歌った曲のタイトルでした。

これはもちろんサリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」をもじったものでして、作詞松本隆、作曲は大瀧詠一です。

 

難しい歌だと思いますが、松田聖子は作詞家と作曲家が表現しようとしたものを的確に受け止めた上に、自分なりの解釈を付け加えて見事に歌いこなしています。

 

洋酒チョコシリーズの”カルヴァドス”は今年も出ています。

参照→「手に入り難いものが欲しいーその1-」~その4まで

上は今年のパッケージですが、下は2013年に始めて発売されたときのパッケージです。

一見同じように見えますが、相違点がいくつかあり、配色も微妙に変えています。

こういう手を抜かない仕事を目にすると、デザイナーの意図が明確に伝わってくる気がして気持ちが良いものです。

 

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何事も3度目には飽きられる

2015年11月24日

今日から5日間、年に一度のボザール工房教室展を開催します。4年前のことになりますが、会場に最適のギャラリーが江別市内にできたので、それ以来ステンドグラスの作品展に使わさせてもらうようになりました。
教室展は3回目ですが、”何事も3度目には飽きられる”が持論の僕としては、思い切った変革を加えたいところでした。

 

 

変革とまではいかなかったけれど、少し会場の雰囲気変わりました。

 

それよりまず、このDMのデザインが変わりました。

これまでは、ステンドグラスの画像も使わず、教室らしさもないデザインにあえてしていましたが、今回は思い切り”ステンドグラス教室”です。

参照→「陽のあたる教室」 2013年 11月17日

「教室展です」 2014年11月10日

 

どうぞご来場ください。

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ハディサの戦い

2015年11月19日

13日夜に起きたパリ同時多発テロ事件は、いまだ終焉の兆しが見えません。それどころかフランス空軍の報復爆撃によって、事はよりいっそう拡大しているように見えます。

そもそもテロリストはなぜパリを標的にしたのか?ISの目的は何か?新聞やネット上では様々な説が入り乱れ、どれもある程度の説得力がありながら、何かが欠けているような気もします。多分それこそが真実なんでしょう。つまり、不完全な動機を抱えた個人が大勢集まって”復讐の連鎖”を作り上げている。立場は相反していても、時が過ぎれば同じ鎖を繋ぐ共同作業者であったことが明確に認識されることと思います。

そんな理不尽さを、強烈に突き付けてくる映画があります。ちょうど10年前の今日、2005年11月19日、イラク西部の町”Haditha(ハディサ)”で起きた虐殺事件を題材にしています。

 

映画の日本公開タイトルは「ハート・アタッカー」。

どこかで聞いたような題名でしょう。

2008年に制作され、アカデミー賞を6部門で受賞した「The Hurt Locker(ハート・ロッカー)」を連想させます。

日本で作ったポスターも「ハート・ロッカー」のそれにそっくりです。

これではまるでB級映画ですよと宣伝しているようなものですが、実際はそうではありません。

「ハート・アタッカー」というタイトルは日本の配給会社が勝手につけたものであり、原題は「Battle for Haditha(ハディサの戦い)」です。

 

 

2007年製作ですから「ハート・ロッカー」より前ですし、アメリカ軍が登場しますがイギリス映画です。

内容は、イラクの民間人たちと米軍、そして反米勢力がそれぞれの思惑のもとに絡み合い、悲惨な事件へとなだれ込んでいく様を緊張感のある映像で克明に描いたものです。

ある細部の一点を緻密に描くことで複雑な全体像が見えてくることがある、そんな思いを抱かせる傑作映画です。

パリのテロ事件を多少なりとも理解する手助けになるかもしれません。

 

ぜひご覧ください。

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ステンドグラスの強度ーその6-

2015年11月11日

ステンドグラスの耐久性に関しては、正しい方法で作ったなら100年はもつということを歴史が証明しています。100年というのは鉛の寿命ですから、100年毎に新しいケイムで組みなおせば、数千年はもつでしょう。ガラスは地球上にある物質の中で最も経年変化しない物質とも言われており、ひょっとすると数万年も数十万年も持ちこたえるかもしれません。

”僕が作ったステンドグラスは、最低でも100年後までそのままの状態です”というのを信条として制作してきました。しかしある時、大手ハウスメーカーの人から「建物が50年しかもたないのに、ステンドグラスだけ長持ちしてもしょうがないでしょ」と言われたことがあります。また広告会社の人からは「ディスプレイに使うんで、3年経ったら廃棄するからその分安くしてください」と言われたこともあります。もっと驚きだったのは、同業者の人が「うちは10年くらいで壊れるように作ってる。10年後には修理の仕事がくるからね」と真顔で言ったこと。冗談だと思って笑ったら、気まずい雰囲気になりました。

ステンドグラスが盛んに作られた中世ヨーロッパでは、労働基準法もなく、建築に関わる様々な法律もなく、予算や納期も未定のまま工事開始、工事のための村を作り工場を作り、生まれてから死ぬまでひとつの建築物に専念するのは当たり前、先祖代々同じ村で同じ建築に携わっているなんてこともざらにあったはず。

例えば、ユネスコ世界遺産のランスノートルダム大聖堂は、1211年に着工し、1475年の完成まで264年を要しています。

そんな時代に確立されたステンドグラスの作り方は、数百年後の現在でもほとんど変わるところがありません。

画像は、2012年にボザール工房の研修旅行で訪れたランスノートルダム大聖堂です。

一方、建築の技術は目覚ましい発展を遂げて、工期も飛躍的に短くなりました。ステンドグラスの注文が来るのが遅いと、建物の完成時に間に合わないという事態も起きています。ある設計士が言いました「予算と納期に見合う仕事をするのがプロってもんだよ」。また役所の建築課では「デザインはどうでもいい。我々が関与するのは、安全性と価格だけだから」と言われ、大きな現場の納期に間に合わなくなりそうになったときには、契約違反時の遅延料を記した表がゼネコンからFAXで送られてきました。

すべてが金!金!金!です。旭化成建材の偽装事件も、予算と納期がせめぎ合う、そんな状況のなかで起きたことと想像がつきます。当分は変わりそうにないこの世の中で、自分はどうするのか、ものつくりの姿勢をどこまで貫くことができるか、試されている気がします。

ー終わり

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ステンドグラスの強度ーその5-

2015年10月28日

ガラスのカットは、人それぞれやり方があるでしょう。人によって身長も手の大きさも力の強さも違うのですから当然のことです。しかしながら、パテの詰め方に関してはただ一つの方法、前回説明した方法しかないと思います。かなりの独断と思われそうですけれど、30年以上この仕事をやってきて、これに勝る方法を知らないし、何より理論的に正しいと思うのです。

現在日本で行われているパテづめ作業の主流は、通称”指づめ”と言われているやり方です。言葉通り粘土状のパテを指でケイムとガラスの隙間に押し込むようにつめる方法です。

 

しかしこの方法では、パテは入り口の部分にしか詰まりません。

長い間、指でパテをつめてきたという方に協力してもらい、実際に作業をしてもらった後パネルを分解してみましたら、この図の通りの状態でした。

 

最もパテを詰めなければならないのはこの部分(ピンク丸)ですが、粘土状のパテをそこまで届かせるのは難しいし、頑張って押し込んだとしてもガラスの断面の細かな起伏にまでは密着してくれません。

さらに問題なのは、実際に窓に設置した後です。

 

 

パネルは縦向きになりますから、パテが完全に乾燥してから後、剥離と落下を引き起こすことになります。

隙間ができたパネルは自重によってしだいに歪みはじめ、ガラスに負荷がかかるようになり、弱いところから破損します。

そうなると早ければ半年、遅くとも50年以内にはパネル全体の歪みを引き起こし、はんだの割れやケイムの破断に至ります。

50年もつならいいじゃないかと言う向きもあるかと思いますが、ちゃんと作ったら100年もつのですから、その半分というのは問題だと思います。

 

 

事前にケイムの縁を丸めておき、液体状のパテを詰めるとこの図の通りに固化します。

これも実際にこの作業を施したパネルを分解して確認しました。

 

 

この方法でパテづめをしたパネルは、長い年月を経てもパテの剥離や落下はほとんどなく、衝撃や振動、自重による加圧にも耐えることができます。

ー続く

 

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