やる気があれば仕事は終わる

2010年03月11日

さていよいよ実際の腐食作業に入ります。
前日の夕食は高カロリー食(すき焼きでした)にして、工房に泊まり、朝の7時にコークスストーブに点火します。
腐食室のある1階が暖まるまで2時間ほどかかります。その間2階で朝食をとり、1時間ほど別の仕事をしてから、いざ防寒服を着込んで階下へ。

知らない人は大袈裟なと思うでしょうが、これほど気合を入れてからでなければ取り掛かれないほど過酷な労働が待っているのです。
何がそれほど大変かというと、まず寒さ。できれば冬はエッチングの腐食作業はしたくないのですが、そんなことは言ってられません。

コークスストーブは熱効率が非常に良いのですが、何せ強力な換気扇で、有毒ガスと共に暖気をどんどん外に吸い出してしまうものですから、ストーブが真っ赤になるほど炊いても足りず、他に石油ストーブを背中に、電気ストーブを側面にあてています。
それでも耐強酸用ゴム手袋の中の手は凍えて痛くなり、しまいには感覚がなくなります。時にはバットの中の水が凍り始めて、それをパリパリ割りながら作業をすることもあります。
作業はほとんど立ちっぱなし、除雪で酷使した腰がずきずきと疼きます。

エッチングは時間差でグラデーションを出していくので、常に時計を見ながら分単位、秒単位の計算をします。やりすぎてしまったらそれでおしまい、元に戻すことはできません。緊張と思考の継続を強いられます。

使用するガラスは職人の手作りで、厚さが均等ではありません。その変化を読み取りながら、作業計画に途中で修整を加えていきます。この判断を誤ると即失敗につながり、作業は3日前に戻ってガラスカットからやり直すことになります。時間の損失は大きいですが、実際に数千円~数万円の余分な出費にもなります。

こうした作業をできるだけ中断することなく、最後まで一気にやり通す必要があります。細かな注意点や計算などはメモをする時間が無いので記憶するしかないのですが、その記憶が失われる前に作業を進めなければならないわけで、最近は脳細胞が刻々と消滅しているらしく、中断は危険!次の日に続きをやるなんてもってのほか。

ステンドグラス 白樺 ナナカマドで結局、この日腐食作業が終わったのは朝の4時でした。
予定より1時間オーバーです。

最近の睡眠障害のおかげで、途中で眠くなることがなかったのは不幸中の幸いでした。

 

そのあと、冷え切った体をアルコールで温めてから就寝。
「頼むから朝早くに起こしてくれるな」とテレパシーで家族に願いつつ・・・。

 

翌日、組み立て終わった作品をライトテーブルに乗せてチェック。

白樺林の遠近感は出ているか? 
~OK!
緑ガラスのぼかしはうまくいったか? 
~OK!

 

ステンドグラス ナナカマドナナカマドの赤い実を可憐に描けたか? 
~多分OK!
etc・・・。

ステンドグラス アカゲラ 白樺アカゲラを一羽、サービスで幹にとまらせました。
喜んでくれるかな?

明日、取り付けです。

ー続くー

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やる気がないと仕事は進まぬ

2010年03月09日

ステンドグラス 白樺 ななかまどすっかり春めいた北海道でしたが、また雪が積もって冬に逆戻り。
工房の向かいの空き地の白樺林が雪に映えます。

ハルが逝って以来、空き地に入るのは初めてのことです。
遠くにハルと仲良しだった犬が散歩している姿が見え隠れし、ハルが目の敵にして追い掛け回していたカラスたちが、高い枝の先で退屈そうにじっとしています。

だらだらしてる場合じゃないな、とは思うのですが・・・。
 
 

 

 

 

現在進めている仕事は、施主の希望で白樺とななかまどの木を主題にしています。
これはやはりエッチングで表現したいと思って、全体の4分の3をエッチングガラスが占めるというデザインをしてしまいました。しかもその半分は 緑色のガラス、色の層が厚くて腐食作業にかなりの時間を要します。
ああ、なんでこんなデザイン考えついたんだろう~と嘆きつつも、とにかく前に進むしかありません。

ステンドグラス 白樺 ななかまどエッチングの作業は、シートカットまでは比較的楽に過ごせます。
暖かい部屋でテレビを見ながら、腐食作業の手順をシミュレートしつつ、ひたすらにカッターナイフを走らせる時間は、結構快適と言ってもよいほどです。

知らないうちにというわけにはいきませんでしたが、シートカットがすべて終わって腐食の準備が整いました。

このあと、真冬の腐食作業は大変です。
やる気がなくてできる作業ではなく、テレビを見ながらなんてリラックスできる工程はひとつもありません。

ー続くー

 

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やる気がなくても仕事は進む

2010年02月28日

3週間ほど前から不眠に陥っています。
元々睡眠時間は短い方で、2時に寝て6時半に起きるのがベストなんですが、最近は3時になっても4時になっても眠気が来ない日々が続いています。
強いアルコールをひっかけて無理やり寝たりもするけれど、我が家の生活のリズムを守るには、どうしても7時には起床しなければなりません。

そんなわけで日中はボーッとして仕事が手に付かず、仕方がないから借りてきたDVDを見ようとするものの見始めてすぐに寝てしまい、起きると軽い頭痛がするのが常です。

気分転換だと言い訳してファーストフードのはしごをし、マック~吉野家~ミスドでギブアップ、三日後に逆コースでもう一度はしごしたら、3キロ太ってしまいました。

運動したらいいかもと思って、先日は久しぶりにスイミングプールへ行ってみましたが、25メートルを3往復目に心臓がドクドクと脈打ち目の前が暗くなって、早々に引き上げてきました。

こんな時に限って急な仕事がいくつか舞い込み、この不景気に有難いことですから、気力を振り絞って打ち合わせとデザインだけは終わらせました。
でもその後が続きません。
どうしても作業台の前に立つ気がしなくって、1週間ほどを無為に過ごしました。

ステンドグラスを生業として30年、やる気がないというのはかつてなかったことです。
やりたくない仕事というのはいくつかありましたが、逆に闘争心が湧き上がってきて、なんとかこなしてきました。
今取り掛かっている仕事は、むしろやる気が起きるはずの好条件のものばかりなのですが、それにもかかわらずこのやる気のなさはどうしたことでしょう?単に寝不足のせいばかりではないような気がします。

「おれ、いったいどうしちゃったんだろうね?」と妻に訴えてみたら、即座に「ペットロス症候群じゃないの?」という答えが返ってきました。
そうかあ~、そうかもしれない。
まるで鬱病の症状みたいだもんなあ~。

2010228-blog.jpg原因がわかったらちょっと気が楽になって、昨日からガラスカットを始めています。
しかしながら、やる気のなさは相変わらずで、CDを頻繁に交換し、コーヒーを入れて紅茶を入れて、たまたま電話を掛けてきた友人と長話、こんな調子じゃいつになったら終わることか・・・。
と思っていたら、夕方になるといつの間にかガラスカットが終わっていて、エッチング準備のシート貼りや下絵描きまで終わっています。
普段の仕事のスピードと変わりません。いやむしろ普段より早いくらい。

終わった状態を眺めても、いつその仕事をしたのか思い出せない部分がたくさんありました。
誰かが代わりにやってくれたのではないかと疑うほどですが、工房には僕一人しかいないのですから、僕がやったことは間違いありません。
しかも仕事はすこぶる上出来、完璧と言って良いほどです。

長年同じ仕事をしていると、意識しなくとも体が勝手に動くようです。
長時間車の運転を続け目的地に着いたとき、道中を全く思い出せないことがあるのと似てるよね、って友人に話したら、「おれはそんなことないよ。そんなのおまえだけだ」って言われました。
そうですか?ホントに?
そんなことないんじゃないかな?
結構同じような人は多いと思うんだけど。

ー続くー

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北海道のいいところーその3ー

2010年02月16日

昨年の夏、工房の裏を流れる千歳川で三女に釣りを教えたところ、すっかりはまってしまい、仕事そっちのけで何度も通うはめになりました。

「続・魚の絵」   http://st-glass.jp/blog/archives/207

秋も終わる頃、水槽で飼っていた魚たちを川に返し、もうしばらく釣りはできないと安心していましたら、三女はどこかで「ワカサギ釣り」の話を聞いてきまして、冬でも釣りができるんだって?どうしても行きたい!と毎日のようにせがみ続け、ついに根負けして一昨日の日曜日、朝早くから出かけてきました。

「ワカサギ釣り」は25年ほど前、東京に住んでいた頃、仲間と誘い合って何度も行きました。
釣り場所は、富士山の麓、山中湖や精進湖でしたが、夜中の12時過ぎ都内を車で出発し、到着は朝5時近く、夜明けと共に釣り始め、午後2時頃帰途につくと大抵は渋滞に巻き込まれ、都内のファミレスで夕食を共にし解散、 アパートに帰り着くのは夜の10時頃でした。
そのころ僕は免許がなくて車の助手席に乗っているだけでしたから、運転していた友人はさぞ大変だったろうと思います。

ワカサギ釣り北海道の2月、川も湖も、みな凍りついています。
一昨日の釣り場は、江別市の隣、新篠津村の「しのつ湖」でしたが、もちろん湖は凍っていて、氷上の穴釣りとなります。

朝6時30分にボザール工房出発、途中で妻の父を迎えに行き、7時前には湖に到着。
湖というよりは池くらいの広さで、湖畔には村の温泉施設もあり、すでに家族連れが何組か釣り始めていました。

管理人よりドリルを借りて直径20㎝ほどの穴を3つ開け、サシ(小型のウジ)を付けた釣り糸を垂らします。
その日は晴れて風もなく、この季節には珍しいくらい穏やかな朝でしたが、それでも水面はすぐに氷の膜が張って、それを網ですくいながらの釣りでした。

ワカサギ釣り

 

最初に釣ったのは三女。
その後も次々と釣り上げ、12時にやめたときの最終釣果は、三女が8匹、祖父が2匹、僕が1匹でした。
立場なし・・・。
ワカサギ釣り ヘラブナ

 

 

 

 

 

しかし僕は、途中で体長25cm超の立派なヘラブナを釣りました。

「どーだ。ワカサギ用の竿でこれを釣るのは難しいんだぞ」と三女に見せびらかすと、「外道でしょ」と言われました。

 

 

 

思い出しましたが、山中湖に釣りに行った時のこと、貸しボート屋のおじさんに「どこから来た?」と聞かれて、その頃僕は東京と札幌の間を行ったり来たりしてましたから、「北海道です」と答えたら、「へぇ~!そりゃご苦労さんだね」と笑われました。
おじさんの話によると、山中湖のワカサギはすべて、稚魚を網走から取り寄せているのだということでした。

すぐ近くに絶好の釣り場がありながら一度も行ったことがなかったなんて、随分もったいないことをしてきたと思います。
地元の人間が、その土地の良さに無関心なのはよくあることですね。

「北海道のいいところ」については、以前にも書いていますが、

「北海道のいいところーその1ー」  http://st-glass.jp/blog/archives/120
「北海道のいいところーその2ー」  http://st-glass.jp/blog/archives/144

まだまだ書けそうな気がします。

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ハルが逝く

2010年01月20日

昨日の朝10時頃、教室にやって来た生徒さん2人と僕の3人に看取られて、ハルが静かに逝きました。
ハルは、ゴールデンレトリーバーのメスで、13年と6ヶ月間我が家の一員として暮らしました。

工房と自宅の間を、僕の車の助手席に乗って行ったり来たりの生活でしたが、昨年秋より体調を崩し、移動を控えて工房で暮らすようになっていました。冬は自宅の暖房が効き過ぎて、ハルにとっては快適ではなかったのです。
ハル 三姉妹先週からはついに寝たきりとなり、3日前に家族5人でハルを囲み工房へ泊まりました。
ハルが子犬だった頃のビデオを見たりして、楽しい一夜でした。僕達が楽しそうにしていると、ハルも喜んでいることがよくわかりました。

三人の娘達は、それぞれが成長期の一時期をハルと共に過ごしており、大人よりはずっと近い存在としてハルを見ていたことでしょう。寝たきりのハルのそばではしゃいでいる様子は4人姉妹のように見えます。

冬休みが終わって始まったばかりの学校から順次戻った娘達に、ハルの死を告げました。
一様に大泣きしましたが、もう2度とハルに会うことも、触ることも、声を聞くこともないのだと実感するのは明日以降だろうと思います。
そのときに本当の悲しみが訪れるはずです。

ハル タンポポハルの亡骸は、自宅の庭の真ん中に深い穴を掘って、つい先ほど皆で埋葬しました。

ハルがいつでも僕たちのそばに居られるように。

娘たちが本当の悲しみを知ったときに、ハルがすぐそこに居ると思えるように。

雪が溶けたら、ハルの上に大好きだったデイジーとタンポポの原が広がります。

 

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